リリアとトレイズ 私の王子様 前・後

リリアとトレイズVI 私の王子様〈下〉 リリアとトレイズVI 私の王子様〈下〉

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
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 ヘタレここに極まり!
 
 まさか、電車内の殺人から、その犯人探しというミステリに始まり、変態を経由してヘタレに行き着くとは! 今回はしてやられました。さすがは時雨沢さん。かっこよくヒロインを助けに来て、犯人と対峙し――そして逆に犯人に説教される主人公見たことない。なんだこれ。
 
 事前に置かれていた緊迫した展開や、細かなやりとりも、実は最後のヘタレ展開を煽るためのお膳立てだったということか……うーん、なるほど。
 
 しかし、ヒロインリリアは、最後の最後で完全な突っ込みキャラになると、最後まで流動的な娘でした。でも、一般人っぽさを演出した上で、前作の主人公の娘である破天荒さも持ち合わせていると考えれば、立ち居地が変わるとこんな形に収まる、というワンケースと納得できる気もします。
 
 ともかく、このシリーズはここで一つ区切りのようです。
 確かに、まあ、この辺ですかねぇ。
 ちゃんと収まりましたし、これ以上続けても……という気もしますし。
 
 しかし、自分でも意外なところではまりました。このシリーズ。以前の司書と爆弾のようなものに惹かれるかとも思ったんですが、あっちは案外、一巻で飽きましたし……。
 
 やはり、物語・世界観・人物とポイントを抑えている、というところが大きいんですかね。あと、戦闘も上手い。個人的に超人同士のバトルよりは、各々が持てる能力を把握して、何ができるかを考えて、状況を打開するというのがお好みなので、地味ながらも役割分担がはっきりしている展開に好感が持てます。

 そして、ヘタレの王子様に乾杯。