司書と爆弾

戦う司書と恋する爆弾 戦う司書と恋する爆弾

著者:山形 石雄
販売元:集英社
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 さてDさんからお借りし、実は誕生日にM川からもいただいた小説です。
 珍しくスーパーダッシュ

 さて、感想ですが。
 いや、上手い!
 本という存在を通して過去を見る少年と、過去に生きていた未来予知能力のある女性の恋物語。そして、そこにからむ、武装司書と、教団の衝突。いいモチーフです。

 ただ、ところどころツッコミどころはあります――たとえば、『本』『魔法』というものの概念がイマイチ不明瞭だったり、『技術』のレベルがわかりにくかったり(爆弾の原理が黒色火薬真空管というのも、また微妙にギャップが。まあ、テキトーに作られたって感じはさせますけど)。よりくだらないところを突っ込むと、感染症広まってるところに台風来たら、決闘のチャンスとかピンチとか云々以前に、ヤバイ規模で伝染することを気にしないのかと。武装司書は己の保身は考えても、その伝染病を止めるということを考えないので、非常に胡散臭い組織に見える――いや、まあ、そう見せたいという匂いはぷんぷんしますが、発想すらしないのは、どうも……。

 一番大きいのは……主人公が爆弾である意味、かなぁ。
 まあ、感情の薄い男みたいなステレオタイプよりはいいかもしれませんが。

 後半は武装司書の話が主軸になることもあり、また、あっさり人間爆弾を解除されてしまったり、ただ流れるままに動いたりと、あまり、感情移入できないまま終わってしまった感じです。
 最後の展開を見ても、あえて主人公を人間爆弾に据えることは必須だったのだろうか? うぅむ、インパクトはあるけどもそれだけ。あとから出てくる魔剣や、武装司書の能力のほうがヤバイし。この辺は、なんというか、人外バトル、例えばヘルシングとかの雰囲気があって、ますます主人公が地味に。それに、最後のはなんでナイフで差し違えなんだろ? なんで爆発で相打ちじゃだめだったんだ? ナイフで刺殺するのが人間の戦い方の象徴――だとしたら、爆弾解除があっさりしすぎている気もするし、

 ともかく、物語の筋から「白紙の人格」が必要だったということは十二分にわかるんですが、爆弾である必要性があまり感じられなかったんですよね。

 ともかくこのあたりは、続巻も見るに、司書の話をメインでやりたい感じなので、そのサーガの中のワンエピソードをもってきたのかなぁ、という印象でした。シーン切り替えとか、展開とか上手いんだけど、イマイチのめりこめない作品だったと思います。オチのメルヘンも、もう少し伏線があればよかったかなぁとも。

 とはいえ、斬新な物語展開は一読に値する代物です。