ウルトラセブン:史上最大の侵略(前編)

 東京MXテレビで放映中であった「円谷劇場:ウルトラセブン」がついにクライマックスを迎えている。最後の前後編、「史上最大の侵略」だ。

 今まで、初代マン、帰ってきたウルトラマン、エース、タロウは見る機会に恵まれたのだが、実は特撮界屈指の名作として名高いウルトラセブンだけは見る機会がなかったので、今ここでみられて非常に感動している。

 しかし「史上最大の侵略」という割には、敵は普通の侵略方法をとる普通の宇宙人で、しかもパンドンも初代マンのゼットンほど「こいつはヤバイ」という感じを与えない。ただでさえ鳥頭でインパクトが薄い上に、弱っているセブンに攻撃を加えているので、なおさら。

 では、なぜ史上最大なのか? と考えてみる。

 もちろん行き着く先は、セブン自身である。
 今までの戦いの疲労に、からだが言うことをきかない自分に、でも地球を守ろうとする意思に、彼は侵略を受けているのだ。パンドンやゴース星人はそのかませ犬……というのは言い過ぎかもしれないが、あくまで追い詰めるというだけの存在でしかない。セブン上司の存在は、ダンの妄想であるという説も、あながち的外れでないと思う。あれは、ダンを追い込むための、ダン自身の発した警告のサインなのだろう。
 
 さて、ここで疑問なのは、どうしてその史上最大の侵略のモチーフを、セブン自身への侵略としたのか? ということである――ここを解くことによって、『ウルトラセブン』というものが常に内包していた何かが、わかる気がする。

 例えば、初代の『ウルトラマン』は『神』だという。

 これは急川先輩の理論を拝借したものだ。

 高度経済成長とともに生まれたヒーロー、ウルトラマンは「巨大で」、「強い力をもち」、「何でもできる」最強のヒーローだった。日常を脅かす侵入者――異星人や怪獣を倒し、燃え盛る炎を消し、人々を助ける。
 だからこそ、スペシウム光線、八つ裂き光輪、キャッチ・リングなどの技をことごとく破り、最後にウルトラマン自身を倒したゼットンは、いわば神殺しの存在であり、40年を経た今でも、バルタン星人など登場回数で勝る者に肩をならべ、最も印象に残る怪獣の一人(一匹?)として名を連ねているのだ。

 そして、その神殺しのゼットンを、無重力弾という新技術で葬った科特隊が、そして敗北したままゾフィーの力を借りて地球をさるウルトラマンが、「神の時代が終り、人間が守り、作っていく時代が来た」ことを暗示させるのである。

 非常に合点のいく理論である。

(※これも急川さんからお借りする理論だが、当時の世相からウルトラマンアメリカであり、科特隊=日本人と捉えることもできる。アメリカという大盾に守ってもらい、最後はそれが倒れて、日本人の自立の時代がくる、と。とはいえ、個人的にはここまで政治的には深読みしたくないのだけれども)

 では『ウルトラセブン』がもっていたものはなんだったのだろう?
 ウルトラマンの放映から一年とたっていない時代に、ウルトラマンと違うベクトルで、先に述べたように特撮屈指の名作と呼ばれるまでに至ったこの作品が包括していたのはなんだったのだろうか?

 引っ張って申し訳ないが、それは次回『史上最大の侵略(後編)』のレビューまでお預けとしよう。
 実は最終回だけなら見た記憶があるのだけれども、続けて、そして放映当初のように週をまたいで見るという見方をすれば、違った何かが見えてくるに違いない。そして、拙いながら経験を積んだ今の歳で見れば、きっと過去に見た自分とは別の答えが返ってくるはずである。
 来週の月曜日が楽しみだ。


 ……ところで、セブンの歌の歌詞。

「倒せ、火を吐く大怪獣〜」

 とあるが、実は作中で火を吐く怪獣は、なんとパンドンしかいないらしい。「火を吐くから史上最大」で「最後の敵」だったらこの真面目な話はどうしてくれるんだオイ。