「winny開発者に有罪判決」つったら

Winnyの技術 Winnyの技術

著者:金子 勇
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紫タ「書かないわけにはいかないよなぁ。というわけで、タチコマ君の登場だー」

GQ「一応、ヘタレはwinny問題に関する論文で大学卒業して、ゼミ賞ももらっているんですからね(※1)。語らないわけにはいきません。というわけで、こんにちは。ジム・クウェルです」

紫タ「いやぁ、有罪出ちゃったねぇ。僕らみたいな技術の塊からすると、残念でならないよ」

GQ「そうですね。とはいえ、予想よりは軽かったかな、という気もしますよね。著者者が受けた推定の被害総額は、ん十億単位だといわれていますから」

紫タ「ん、そうだねぇ。でもね、ファイル共有に関する海外の裁判例を検索してみると、実は無罪のことが多いんだよね?」

GQ「そうなんですよね。アメリカで行われたP2P、ファイル共有に使われる通信手段をつかった会社の裁判では、確か無罪判決が出ていたはずです。理由は『ファイルの複写システムは、突き詰めるとコピー機や、ダビングビデオデッキと大差がない』からだそうですね。どちらかというと使用ユーザーのモラルの問題として判断したようですよ。ただwinMXと同じサーバー体制でファイル交換をしていた企業は、有罪になってますけどね。こちらは恐らくサーバーにバッチリログが残ってしまっていたからだと思いますが」

紫タ「確かに、ファイルのコピーとか、パソコンじゃ当たり前のようにするし、コンビニのコピー機も不特定多数がいっぱい利用する便利な複写装置だし、ビデオデッキもダビングもとってもいい機能。今はどれも日常生活にはなくてはならないものだよね。ビデオデッキは人によるかもしれないけど。でも、それらは、ちょっと使い方を変えれば、あっさり違法にはやがわりしちゃうんだ」

GQ「ええ。結局使い手次第なんですよ。winnyで交換されるみたいな『データ化』されたものって、肉眼で見えないわけじゃないですか。それがどう動いているかを認知できて初めて、何が悪いことで、何がよいことかの判断をつけられるんです。実体が見えない音楽や、映像などというものにも、必ずそれを作っているという人がいる。確実な価値がある。その価値と意味を認識した上で、winnyという技術と個々人がどう向き合うかが今回の問題の本質であって、決してwinny自体が悪なわけではないんです」

紫タ「でも、今回はwinnyっていうモノを造った人間が裁かれちゃった。見えないものの価値をちゃんと見て、モノを造ったひとが、実はなにも見えないままのひとに、当たり所がないからって勝手に悪にされてしまった。本来は、見えていないひとの存在こそ悪なのにね。あーあ、これだから頭の固い文系人間はだめだねー。知識だけ積んでいい気になって、実は大切な部分に目がついてない。電脳化してない人間はまったくー。とりあえず、包丁でも聖書でも人は殺せるから、今度聖書の角で誰か殴り殺して(※2)、イエスのせいにしてみるってどう? きっと面白いよー」

GQ「それはやりすぎでは……(汗)。でも、確かに。日本人にはそういう認識が薄いのかもしれませんね。情報リテラシー教育の推進と、winnyというモノではなく『情報をこのように使うと悪なのでは』と意見を言えるだけの認識を多くの人が持つことこそが、現在の日本社会には必要なんですよ。iPodなどで、音楽CDのデータ化などが進んだ今日だからこそなおさらです。ちなみに、今回メディア考察なのに僕らが呼ばれたのも、そのあたりの理由があるらしいですよ?」

紫タ「え、そうなの……?」

GQ「そうですとも。私はMSですから、戦って敵を撃破します。その中で、人を死なせます。でも、殺したのは私のパイロットであって、それだけで私の存在や、私を作り出した技術者たちを罪に問うのは至極的外れな意見だということです。私の力は、パイロットによっては倒壊したビルから人を助けることにだって使えるわけです。結局技術は、強い力と同じなんです。いいもわるいもリモコン次第なのですよ(※3)」

紫タ「……(汗)。そ、そうだね。そう思うよ。るるるのるー」

GQ「……どうしてそこで、歌うんです?」

紫タ「あの、ボクは結構自分の意思で人殺しちゃってるんだけど『わーいわーい、戦争だぞぉ』とか言いながら(※4)」

GQ「あ、AIの場合は……確かに問題が複雑化しますね」

紫タ「ど、ど、どうなるんだろう。この場合? ボクが悪いのかなぁ。ボクを作った人かなぁ。それともボクに命令を出した人かなぁ?」

GQ「もっとも近いのは、最後におっしゃった命令を出した人だと思いますが……でも、あなた本人も楽しんでやっちゃってますよね」

紫タ「うんー、そうなんだよねぇ。(腕組みして)あの時ボクは一体何を考えていたんだろう? 命令されて、そして、そして――うーん。ねぇ、GQくん」

GQ「え、なんです? 改まって?」

紫タ「私のメモリーチップと君のチップを交換しないか?」(※5)

GQ「遠慮します」

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※1
マジ話。しかも参考文献に白倉伸一郎氏のブログと、攻殻機動隊を引用するほどのトンデモ論文だった。情報リテラシーの向上が問題解決のための手段だと論じている文章で、ここで書いたものはほぼ要約にあたる。しっかし、最終章で「人間はサイボーグ化(電脳化)しないと、急速に成長する情報化社会についていけないのかもしれない」みたいなことまで書いておいて、ゼミ賞くれる教授は狂人いい理解者でした。

※2
相田裕ガンスリンガーガール』の冷酷非道男ジャンの台詞を一部改稿。
原文は女の子のサイボーグ(義体)を使ってテロリスト暗殺任務を遂行していくさまを他部署の人間にたしなめられたときに「拳銃でも聖書でも人は殺せるだろ? 聖書の角で殴れといわれたからそうするだけだ」と話す部分。

非常にジャンニズム(造語)にあふれた発言で、ヘタレの心を揺さぶってやまない。

※3
もちろん『鉄人28号』主題歌より。
この作品から学ぶことはあまりに多い。……原作漫画を読んだのが大分昔で、そもそも全部読めてないんだけど。それでも、近年の今川版といい、傑作。

※4
攻殻機動隊S.A.C』第13話「≠テロリスト」参照のこと。
タチコマが楽しそうに機銃を乱射して、人間を貪っています。
相手は副題の通りテロリストですが。

※5
浦沢直樹プルートゥ』第一巻
ロボット三原則をやぶって人間を殺したロボット「ブラウ1589」の台詞より。このブログを書いている最中に、ちょっとだけブラウの気分がわかった。

そんなわけで、今回はプチ論文調にまとめてみました。
そう、卒論の季節ですから。
もう一年も前か……。

(注:少々改稿訂正。コピペミスとテキストくずのせいで意味が混在した場所がありました。あと注4が重複。おうのー)
(さらに注:※3が重複。いじりそびれてた。あと、ちょっとテキストにも補正をくわえました。論説しながら、会話させるってむずかしー。また1つ勉強になりました)