ウルトラマンメビウスにムルチ&メイツ星人登場

 いや、ついにやったね。
 ムルチ。

 『帰ってきたウルトラマン』におけるムルチの回の悲惨さはここでも語ったと思う。
 
 要約すると宇宙人を恐れた地域住民が、地球のために怪獣ムルチを封印していた善良な宇宙人をゲバ棒とポリスメンの拳銃を持ってキルってしまい、ムルチ大暴走。帰ってきたウルトラマンである、主人公郷秀樹は、こんな人間たちのために戦うのかと、一度ためらうものの、自分の使命は使命だと割り切り、人々のためにムルチを倒す。そして、唯一宇宙人をかくまっていた少年が、泣きながら、メイツ星人の残した宇宙船を探すという極めて陰惨なエンディングとなる。

 さて今回のメビウスの話は、そのメイツ星人の息子が、地球人を野蛮で凶暴な種族として、カスタマイズしたムルチを使って復讐をしに来るというものだった。
 主人公:メビウスの制止を聞かず、ムルチを暴れさせるメイツ星人。改造ムルチを自分の精神と連動させ、さらに凶暴化させる。しかし、過去に、一人穴を掘って宇宙船を探していた少年とであった女性――たまたまそこにきていた幼稚園の園長――が、そのことを彼に伝える。
 しかし、人間と友好を結ぼうと思っていた父の意思をしってなお、こころの底の憎しみは拭いきれなかった。
 
 彼は叫ぶ。

ウルトラマン! ムルチを止めてくれ!」

 と。

 怪獣を種族間に起こる「憎しみ」の象徴として、ウルトラマンがそれを退治するというカタルシスの効いた作品に仕上がったと思う。
 しかも中盤、ウルトラマンも絶対に正義と思われていないことを強調している。なぜムルチなんて怪獣をつれてきたのかという主人公の問いに、メイツ星人は「地球には君がいる。ウルトラマンという戦力がある。それから身を守る術を用意するのが、なぜいけない」と答えるのだ。
 なので、このあたり、ただ単純な「憎む心は悪」という勧善懲悪のエピソードにもなっていない。
 ウルトラマンは、たまたまそこにいた執行可能者に過ぎず、正義の使途ではなくなっているのだ。

 うん、すっげー名作!
 とまではいかない。
 が、平成特撮の中ではかなり上位に来る出来だったと思う。

 もっとも「ヒーロー」に善と力を求めるひとにはいささか消化不良な回だったかもしれないが。