業界の話

 ちょっと思うところがあって、今日はこっちの話をしてみる。

 

 「業界人ぶっててつまらない」などという方は、きっとつまらないはずなので見ないでいただきたい。

 むしろ見て何か言われるほうが迷惑だ。

 この点は、今回最初にすっぱりと切らせていただく。





 話はヴァルキリープロファイル(以下VP)シルメリアの話ともかぶる。というのもこのソフトのアマゾンのレビューに、こういった類のものがあったのだ。

 要約すれば、



「容量不足ながら、スタッフは十分な頑張りをした。それを認めるべき。1が良かったというやつは1をやっていればいい」



 といったものである。

 この意見、残念ながら同意できるところは「スタッフは十分な頑張りをした」というところのみだ。



 まず、後半の一文は全く筋違いの意見だと思う。

 「2」の名を背負った以上、連作であると主張した以上「1」のプレイヤーを何らかの形で納得させる義務を背負ったようなものである。

 もちろん、違う演出をして魅せるのは問題ない。クリエイターの腕次第だ。が、それは「1」を好んでいた人間をないがしろにしていいわけではもちろん、ない。



 多くの人は「あの作品の続編なら」と考えて「2」を手に取る。その前提は覆らない。その彼らに認められなければ、「2」を名乗った作品としては失敗なのだ。ただ単に気に入らないなら「1」をやっていろというのは、暴論であるように感じる。

 「2」が駄作になるジンクスがあるといわれる理由はここにある。

 前作という鉄壁の比較対象があるためなのである。





 話を戻そう。

 上は「この意見には納得できない!」部分だが、今から話す部分は「それは違う!」という部分であり、今回語る重要な部分でもある。



 そう「容量」の部分である。

 実は、PS以前はこの「容量」の部分を非常に単純な方法で解決していたのだ。VPの前作をプレイしたことがある人ならば、それが何であるかわかるだろう。

 

 そう。単にディスクを複数枚にするのである。

 VP1はディスク2枚組だし、ガンダムGジェネFなどは4枚だったりした。だが、PS2以降この方式はほとんどとられなくなった。基本はディスク1枚で、複数枚ある作品のほうが稀だ。複数あっても、片方は特典ディスクだったりである。



 これはDVDメディアになったことで、容量に余裕が出来たというのは確かに一つの要因である。が、これはあくまで初期のソフトで、最近はフルで容量を使う。おかげでグラフィックは美麗になったし、3Dの動きも滑らかになった。

 例えばFF12VP2のように。



 が、容量不足で十分に表現がきかず、ディスクを複数枚にするという策がとられる作品は、PSに比べて少なくなっているのではないだろうか。本当にグラフィックやシステムなどをしっかり魅せたいのなら、容量が欲しいのならば、複数枚ディスクにする作品が出来ても不思議はない。



 ならば、なぜそれが行われないのか。

 こちらも、実は答えは簡単なのだ。

 

 ディスク一枚あたりにかかる金の量が半端でないからである。



 CGが良くなったということはそこに大量の資金が投入されるということ。グラフィックデザインがらみの人手が大量に必要だし、それのデバッグにも多くの時間と予算が必要である。

 ソフト1本あたりにかかるコストは、既にPS時代の数倍――とは行かないまでも、確実に跳ね上がっているのだ。

 

 だから、(残念ながら)できる限りグラフィックを削ったりする努力が必要になる。

 例えばVP2もエインフェリアの過去のシーンイベントをすべてCGで作ったら、もう火の車になることは想像に難くない。



 一番この問題が顕著に現れたのが、先述したFF12である。

 このソフトは、確かに売れた。人気もあった。

 だが、残念なことに、開発費とつりあうだけの十分な利潤が出るほど売り上げが伸びなかった。

 「売れはした。が、それほど儲からなかった(※注)」のだ。



 あれだけ多くの人が買うFFでも、採算が合わなかったのである。



 より突っ込んだ話をしよう。

 E3(アメリカ最大のゲームイベント。PS3wiiの発表があったイベントである)の後、ファミ通電撃プレイステーションなどから一斉にFF12の攻略記事が消え、PS3FF13や、ヤンガスの記事が主力となったのは、冷たい言い方をすればFF12が「既に商品としての役割を終えた」からと言えるのである。



 VP2は確かにその中でよく頑張ったと思う。スタッフの方々はかなり苦しんで作り上げたものだと思う。そこは認める。しかし、その製作状況が、作品に暗い影を落としているという事実は、確実に存在しているはずなのだ。





 ――軍事用語に「攻勢終末点」という言葉がある。

 攻めるほうは、補給線が延びて戦力の維持が困難になる。

 攻められる側は、補給線が近くなることで戦力が安定して供給される。よっぽどの要因(片方が馬鹿みたいに戦力を持っている等)が無い限り、この点で戦争が膠着するのだ。



 コンシュマーゲーム業界は、この攻勢終末点についに差し掛かった。

 少なくとも、僕はそう思う。



 それでもなお、スペックと容量という名の戦線を拡大し、勝利を狙うPS3。このジレンマを打開するために、アイディア戦に土俵を移そうとするwii



 攻略するのは、ユーザーの財布。



 はてさて、どちらが勝つのやら。

 今年の11月は、目が離せそうにない。 



※注

 この一文は引用である。

 電撃プレイステーション「PS業界大人の話」より。



 純粋に面白いので、読んでみることをお薦めしたい。