装甲騎兵ボトムズ、レア3作

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 さて、今回もメディアレビュー。

 『ガンダム種死』で「オレンジショルダー」なる悪質なパクリをされ、最近は『フルメタルパニック』にもいい感じにウド編がまんま使われた『装甲騎兵ボトムズ』のレッドショルダー因縁シリーズともいえる3作。

 ちなみにどれもレンタル屋ではレアなので、見つけたら借りてみることをお薦めする。

 ちなみに『メロウリンク』と異なり、上記メモリアルボックスには入っている様子。





・『装甲騎兵ボトムズ 野望のルーツ』 



 『野望のルーツ』は、主人公キリコ・キュービィがレッドショルダーに配属されるという筋のお話。

 キリコは渡り歩いた戦場で驚異的な生存率を見せる。そこを「最強の兵士団を作る」という野望をもったペールゼンという将校が手を回し、レッドショルダーに異動させられる。

 ペールゼンキリコを「生物学的に種の中に存在する、異能生存体」であると理論付け、そこで「キリコが如何に死なないか?」ということを実験するのだが……。銃機関銃の斉射を喰らっても当らず、バズーカの破片にも当らず、近距離で拳銃を撃たれても紙一重でかわすキリコ。

 確かに異能生存体。



 完全にネタバレをするとキリコは「異能者」と呼ばれる超人間であることが『装甲騎兵ボトムズ』本編の最後で明らかになるのだけれど、まあ、その辺りに最初に目をつけたのがペールゼン。彼がキリコに出会うことが、今後彼の野望を推し進めていく元になる。だから本作は『野望のルーツ』なわけである。

 彼はキリコを思い通りに動く忠実な兵にしようとするが、キリコはそれに反抗し、最後ペールゼンに「おまえはかならずころす」的なニュアンスを口パクで告げる。



・『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』



 で、そのあとに続くのがこれ。

 ボトムズ本編は、件の賀東氏によるパクリ疑惑のある「ウド編」、その後「クメン編」「サンサ編」「クエント編」という各1クール計4クールの一年放映構成をしているのだが、この『ザ・ラストレッドショルダー』は、この「ウド編」と「クメン編」の間に位置する話だ。



 結局キリコはペールゼンの思い通りにならず、業を煮やした彼は最後にキリコと、その仲間達に内容の不明瞭な任務を言いつける。結果、それは友軍の基地を攻撃し、機密を盗み出すという非常にヤバイものであった。ここでキリコはフィアナ――本編ヒロインであり「パーフェクトソルジャー計画」と呼ばれるものの実験体と接触、結局それが『装甲騎兵ボトムズ』本編第一話となる。



 死ぬような任務を自分達にやらせたペールゼンに復讐すべく、終結した生き残りの元キリコの戦友であるレッドショルダー隊員たち。彼等はATスコープドックをカスタムし、ペールゼンの秘密基地らしきところに攻撃する計画を立てる。

 キリコは「ウド編」で接触に成功するも離れ離れになってしまったフィアナの足取りを追うために、その作戦に参加する。「パーフェクトソルジャー計画」――文字通り完璧な兵士を作るというこの計画をしたのは、ほかならぬペールゼンだったのだ。

 

 フィアナは、自分の弟分に当る二代目実験体イプシロンを、その秘密基地で教育していたが――ペールゼンが、イプシロンを命令に忠実な兵士として精錬させ、キリコと対決させようと試みていると知り、当惑する。フィアナは最初の遭遇以降、キリコに愛情に近いものを抱いていたのだ。

 

 そのような状況とは知らず、攻撃をかけるキリコたち。

 しかし、ペールゼンは己に忠実だった旧レッドショルダー隊員を集めており、これを迎撃する。スコープドックカスタムVSレッドショルダーブラッドサッカーの激戦が行われる。

 

 イプシロンは、その襲撃で覚醒。攻撃衝動の赴くまま、キリコら元レッドショルダーチームのスコープドックカスタムを破壊。最後にキリコを追い詰めさらに、ペールゼンの指示に沿って殺そうとする。

 が、フィアナがそれを止め、そのまま二人は逃亡。ペールゼンは死亡する。

 そして「クメン編」へと繋がるのである。



・『装甲騎兵ボトムズ ビッグバトル』



 今作は時間軸的に「クエント編」の後だと思われる。

 キリコらは、流れ着いた星で行われているバトリング(ATを使った賭けバトル)を観戦。そこで連戦連勝している男は、実はメルキアと百年もの間戦争を行っていたバララント軍が開発したPSの実験体だった。

 彼は戦争時レッドショルダーに因縁を持っており、元レッドショルダーであるキリコと戦うため、フィアナを拉致。そして、大戦時に作られた地上戦艦と戦うバトリング――ビッグバトルを行うように強要する。



 キリコは己の因縁を晴らすため、愛機スコープドックの右肩を赤く塗り、レッドショルダーとしてビッグバトルを戦うと決意する。



 仲間であるゴウト・バニラ・ココナ、そしてATベルゼルガを駆るル・シャッコーの助力もあって、このビックバトルを勝利し、レッドショルダーの因縁を晴らす。



・総評

 ぶっちゃけた話、本編より後発の作品なため、「ガンダム」の『0080』『0083』『08小隊』の例のごとく、どれもどこかしらに矛盾点を抱え、また50分尺というところから物語として収まりが悪い部分がある。そういう意味ではどれもいまいちである。



 しかし、『野望のルーツ』『ザ・ラストレッドショルダー』は、レッドショルダーとキリコの因縁、そして本編への絡ませ方がある程度納得いくものなので、その辺りの整合性は良く、サイドエピソードとしては面白い。



 だが『野望のルーツ』は少々展開が強引――敵軍との交戦中に、急に士官が部下と共にキリコを攻撃したり、である。

 『ザ・ラストレッドショルダー』は、レッドショルダーという因縁という血なまぐさいものとの対比になっているということは分るものの、まだPSとしての戦闘教育が成されていないイプシロンの側がいまいち映えず、結局キリコたち元レッドショルダー側の緊張感を削いでしまう感じがする。



 そして『ビッグバトル』。一応の筋は通るものの、なんというかレッドショルダーの因縁のかたを付けたいという要素とPSがらみのテーマが競合していて、しかもPSがらみのイベントは解決を見ないまま終わるために、消化不良感がある。この点は「クメン編に続く」という形をとっている『ザ・ラストレッドショルダー』にも言える事であるが。

 何より、クエント編のラストあたりの話と対比して考えると、本当に「後付」の感じが出てしまうのが痛い。



 というわけでこの作品群、一言で言うなら「面白くはあるが、アラも大きい」という感じ。

 だが、原作である高橋良輔氏の中にある「ボトムズの世界」「キリコ・キュービィの物語」を深く知りたい方ならば、お薦めの逸品であることは間違いない。



 ……。

 さて、実はこの「ボトムズ」シリーズ。後はOVAシリーズ『装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端』さえ見終えれば、ほぼシリーズ全てを極めたことになる。あとはスニーカー文庫の小説くらい。

 「ガンダム」より先に「ボトムズ」を極めてしまうのは、ちょっとアレな気もする――が単純な量からすれば、はるかにガンダム極めるよりは楽だろう。



 ちなみに「ガンダム」は『ZZ』『F91』が未見で、『G』『W』『X』『ターンA』は断片的にしか見ていない。とりあえず『ターンA』辺りから潰していくか……。