AKIRA

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 ま、例によってネタバレ注意。



 実は大友氏の作品をじっくり見るのは、これが始めてだったりする。

 『スプリガン』は見たが、大分前なので記憶があやふや&こんな作品批評が出来ないほど未成熟であったこともあり、まあ、厳密に言えば見たことにはならないだろう。なのでこれが初めて触れる作品と言ってもいい。



 なんというか、これが大友氏の最高傑作と言われる理由は、よく分かった。ところどころご都合的にキャラが動くところはあるものの(まあ、2時間という尺では仕方ないか)、対となる主人公、金田と鉄雄の心理。そして、謎の「AKIRA」というものを主軸に回る少年たちと大人たちの関係が深い。



 これらは何より世界観が秀逸であるというのが大きい。

 成熟しすぎ、荒廃した世界。それを吹き飛ばす最後のシーンは、カタルシスという言葉がまさに相応しい。そう視聴者に感じさせるだけの世界と、物語と、人を描ききっている。



 さらに派手なネタバレをしてしまえば、結局「AKIRA」というもの(厳密に言えばそれに象徴されるもの)は超能力の延長線上にある「人類の可能性と進化の力」である。そういう意味で、モチーフとしては永井豪氏の『ゲッターロボ』に近い。



 進化の力は無限の可能性を秘めているが、それは使い方を誤れば悪夢のような厄災を生む。その厄災の象徴は鉄雄少年であり、それが小さなコンプレックスが肥大化したものであった。

 先に書いたとおり金田はその対で、AKIRAの「力」を全く使わない。その厄災に巻き込まれながらも生き残り、最後のシーンで壊れかけた街に帰っていくという「小さな可能性」を見せ付ける。



 人の生きること。その可能性。

 『AKIRA』は見事にそのテーマを表現しきった作品と言えるだろう。





 また、「AKIRA」を研究する科学者がアインシュタインに似ていたり、荒廃した政府の重鎮がかつての宮沢首相に似ているのは、皮肉が利いている。特に前者は、探究心によって多くの功を残したものの、原子爆弾という罪を生み出してしまったということを、同じく「AKIRA」という研究でやっているという意味で非常に興味深い。





 ちなみに紹介画像はDVDだが、丁度「AKIRA」というものの正体が判明するシーンでチャプター28になっているなど、芸が細かかったりする。



 あー、借り物消化前に、こんなレビュしてスイマセン。

 たまりに溜まったレビューを今後消化していく予定です。

 しばらくは急川さんとこのブログみたいに、作品とその考察ブログになるのかな……?