ヒーローと正義

ヒーローと正義子どもの未來社白倉 伸一郎このアイテムの詳細を見る




 さて、急川さんからの借り物。

 もともとかなり興味深かった本であり、比較的読みやすい文体もあいまって一晩で読んでしまった。



 

 いや、なるほど、と納得させられる。

 一部論理の展開に疑問がある部分があるものの、「敵」とは、「悪」とは何かを正確に考察しており、そしてそれに対する(実はこの「対する」ということがこの本書の肝であり、根本の問題点でもあるのだが)「正義」というものの観点を自分なりに持っている。



 ……しかし今回、内容については細かく触れない。



 理由として、いかんせん論文なので、そのまま中身を解説しつつ持論を展開しようとすると膨大な活字量が必要である。



 あと、ややこれは批判的な見方だが、本書が正確に論文の体裁をなしていない、つまり何がどうあって→こうなるということを解説をする上で、要素を整理し切れていない部分があると感じるので、そこを自分のなかで整理する必要があると考えているのもある(これは僕個人の読解力不足といわれれば、それもあるのだろう。いかんせん論文慣れしているわけではないので)。

 読み込みの浅さで、中途半端なことを書いてしまうのは怖い。



 なので、本書の詳細なレビューは、後日また分割・分解して(例えば章ごとや要素ごとにして)ここで記そうと思う。

 



 ただし。



 少なくとも、真剣に物事を考え、本でここまで持論を展開でき、確実な「ヒーローと正義」の構想を持っている人間が作品作りに携わってくれているということは、非常に心強い。

 作品作りへの熱意が見える。

 というわけで「業界に生きる、一人の作り手の意思を理解する」という意味で、問題なく本書はお薦めだ。





 余談だが、こういうのを見ると、少年漫画連載者の書いた「ヒーロー像」論や、美少女ゲーム業界の人が考えている「萌え」論とか、そういった本を読んでみたくなる。クリエイターがどういう概念をもって作品を描いているかは、どんなメディアを見ても非常に気になるものだ。



 ……そういうものを受けて側が気にならず、且つ作り手もそういうことを意識しなくなったとき、恐らくこの国のメディアは空洞化を迎えるだろう。

 いや、もうそれは始まっているのかもしれないが。



・追記

 以下は、白倉氏のブログである。

 いろいろ書いてあるので、興味があったら読んでみることを薦める。



 ……実は卒業論文winnyの問題を扱った際の引用先でもあったりする。クリエイター側から見たwinnyというもののナマの意見が書いてあり、非常によい資料となったからだ。



 例によって先方への迷惑を考慮し、直リンクはしないでおく。

 http://homepage.mac.com/cron/iblog/