燃えよ特撮魂! 第三回:井上敏樹脚本ライダー

 くそ。



 前回否定的なこと書いておきながら、もう井上脚本響鬼が気に入りだしている僕。とはいえ、「恋する鯉」とかは正直良くなかったのですが。

 いや先週、今週の「飢える朱鬼」&「蘇る雷」の連作は上手かった。

 今回は朱鬼と、斬鬼の関係。そしてそれに絡む伊吹鬼とその弟子明の関係がなかなか上手く描けていました。そして複線の張り方も綺麗でした。

 前半だけみたときは、朱鬼の逸脱した設定などがアラに見えていたのですが、次の週の後半部で、そのあたりが完全ではないながらも説明されていたし。もちろん29話以前と設定やキャラクター性の齟齬は起こしているんですけど、それにも慣れてきましたからねー。



 ああ、あとようやくキリヤの意志も見えてきましたし(やや投げやり)。



 29話までは「ヒーローとしての、憧れの対象としての鬼」というのがあったのですが井上氏に脚本が代わってからはテーマが変わりました(この辺はこないだのブログ参照ということで)。

 それが上手いほうに働いたのが、今回の斬鬼と朱鬼の回だったなぁ、と思います。

 29話までの流れは、それはそれで面白かったですけど、今の響鬼の流れも嫌いじゃないなぁ。結局しばらく呪縛からは逃れられんか……。

 



 さて、井上敏樹氏という脚本家は『壮大なストーリーの中に一発キャラを登場させ、30分×2〜数話でまとめる』のがめちゃくちゃ上手い人だと思ってます。それでいて、そのキャラクターがちゃんと生きる。氏が脚本の平成ライダーシリーズは、どこかに、それがあるのが良いです。





 『アギト』では、名(迷?)脇役北条にスポットが当たる18〜19話である。尊敬していた課長の司が、怪人の殺人に見せかけて殺された家族の復讐を果たそうとしていたことに気がつく回です。

 最後、尊敬する上司の罪を暴き、自主を訴えることとなった北条に言った、司の最後の台詞が泣けた。

司 「お前を育てたのは、間違いだったな」

北条「……」

司 「いや……良かった!」





 『龍騎』では、仮面ライダーインペラーの回41〜44話。最後に生き残ったライダーが望みをかなえられるという条件のもとライダーが殺しあう話です。「恋人を生き返らせる」「自らの不治の病を治す」といった目的が乱立する中、「金を稼いで、裕福になる」と願うインペラー。

 しかし、諸々の事情で、金と名誉、そして恋人まで得てしまった彼は、ライダー同士の戦いに意味を見出せなくなってしまいます。

 それでも、戦うことを強要されてしまう彼は、ついに戦いで敗北。ミラーワールドという世界で戦うライダーにとって、敗北は消滅を意味します。最後、消えかけながら、彼は言います。

「俺はただ、幸せになりたかっただけなのに……」





 『555』は例外なのですが、名作7、8話。「夢の守り人(前・後)」が最高。「夢」というテーマのもと、立場の違う別々の二人(平たく言ってしまえば、ライダーと怪人)が戦うというエピソードです。しかもその二人自身には夢という夢はなく、それでも誰かの夢のために戦ってみるというお話。

 一人は、夢をかなえようとする仲間のために。

 一人は、夢破れた仲間の復讐のために。

 熱い。

 これに関しては、長くなるのでここでは省略。

 というか、みなさん、この回は本当に名作なので、騙されたと思って555の1〜8話は見ていただきたい。とりあえず名台詞だけ。

「おい知ってるか! 夢ってのはな、ときどきすっごく切なくて、ときどきすっごく熱くなれるもの……らしいぜ。俺には夢がない。だが……夢を守ることはできる!」

「知ってるか。夢ってのは、呪いと同じなんだ。叶わなければ一生呪われ続ける。……あなたの、罪は重い!」





 『ブレイド』では17〜19話。ダディアナさんがへたれてライダーギャレンであることを辞めようとしていたとき現れる先輩で「過去、ギャレンになるはずだった人」、桐生。彼がどのように生きて、どのように死ぬかの回です。

 この回は名台詞らしいものはあまりなかったのですが、それまでがそれまでだったこともあり(汗)かなり良かったことを覚えています。



 

 気に食わないところももちろんある。

 あるけど、やっぱり上手い。

 尊敬できる脚本家ですよ、井上敏樹氏は。