ブラックジャックによろしく

ブラックジャックによろしく (13)

講談社


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 といわけで13巻め。

 精神科編集結。

 しかしなんだ、この打ち切りエンディングみたいな結末は。

 主人公が青空に向かって自分の理想を語るといろいろ終りフラグですよ(苦笑)。



 相変わらずこの人はすごいですね。世間が避けるところをまっすぐ突っ走る。



 熱血医者見習い路線でスタートした本作ですが、いつの間にか、社会における医療問題に疑問を投げかけるというものに進化しました。

 某所のレビューを見てみると「コレは本当の医者じゃない」とか甚だ見当違い(と僕は思う)な意見を聞きます。

 が、いや、これは疑問を投げかける作品に「見える」ことに意義がある作品で、別にリアルの医者を克明に書くことはそもそも目的としていないののだと思います。

 「現実の問題を指し示すフィクション」といえば丁度よいのでしょうか? そういう見方をしないと、面白くないかと。



 この作品ほど見えすぎている例は珍しいですが、小説・アニメ・漫画などは何にせよその時代の影響を強く受けるもので、そういう一端を見つけ出すのも、作品に接するに当って面白いのではないかなぁ? と思うのですが……。ま、頭が固くなるのでお薦めはしません。





 さて、今回の精神科編は「現代社会における精神病と、その認識」というものです。概ね書いてあることに同意ですね。いや、いい話でした。



 しかし、僕が気になったのは

 精神病への世間の誤解をつついた記事に対して、『被害者の立場、気持ちを考えろ』という批判が来るという部分でした。



 薄っぺらい。非常に薄っぺらい。

 こういうことを言う人を、僕は信じないようにしてます。



 いや、もちろん何かの被害者の方がいたら痛ましくは思うのですが、それを振りかざす権利は被害者以外にはないわけだし。第三者がこういうことを言っていると、なんというか、いい人でいたいっていう欲望の上に胡坐をかいているようで、かなりイラつきます。あんまりに度が過ぎれば被害者本人が言っていてもイラつきます。

 

 そもそも最大の問題は結局こういうことを主張したところで「で、何が進展するの?」という疑問があるからですね。こう主張するひとは、ちゃんとビジョンを持っているのか? 絵空事を並べ立てているのではないのか? 思わず疑りたくなってしまいます。



 はっきり言わせてもらえば「被害者の気持ちを考える」というのは一つのトラブルを収束させる――けじめをつけるのには必要ですが、それ以後進展させるという意味では、ただ「痛ましい」「可哀そう」という感情にとらわれてしまう非常に無意味なことだと僕は考えます。



 「現状」と「今後」。

 はっきり別のこととして切り離して考えるべきでしょう。



 ……ですが、まあ、それがみんなできるなら現在のいろいろな問題――たとえばお隣の国との議論とか諸々――も解決するんだよなぁ。所詮人間は感情の生き物ということですか。

 じっさい、こんなことを書いておきながら言うのもなんですけど自分の身の回りの人間がトラブルの被害者だったら、僕自身もどうするかわかりませんし。

 できる限り理性でモノをみたいと思いますがね。



 ともかく『ブラックジャックによろしく』13巻は、この点にも焦点を当て、体現してくれた作品と言えるでしょう。

 

 上の細かなうんちくはともかく、本巻の3人の主要人物くらいの生き様をしてみたいもんです。